本研究は沖縄の近代化によって、沖縄の淡水問題はどのような課題を背負うようになってきたのかを環境史的に明らかにすることを目的とするものであり、本年はその初年度にあたる。この初年度は研究の準備作業と、沖縄などのいくつかのフィールドにでかけて、資料の蓄積をすることに専念した。そのため、まだ公表した論文などはないが、すでに草稿段階までできあがった論文があるので、次年度中に論文の公表に至るであろうと想定される。 基本的に沖縄などで、淡水問題の不足と水質が問題となってくるのであるが、それが安易にダムなどの巨大な施設で対応しようとする傾向が高い。いわゆる公共事業のすべてが問題とは言えないが、こと沖縄においては、仕事をつくるために公共事業を行っている側面が強く、環境的には必ずしも望ましくない政策がうたれる傾向があることは否定できない。したがって、本年度の研究においても、その対極とも言えるコミュニティレベルの水の利用の実態についてのデータの収集にかなりの精力をそそぐことになった。それぞれのコミュニティがなにゆえに、従来の水を得る方法、すなわち湧き水や井戸や小川など、を捨てて水道などに頼ることになったのかを、それを使っていた人たちからの聞き取りを通じて少しずつ問題点をあきらかにしていく作業を現在はすすめている。水の文化など価値観に関わるデータも意図的に集めるようにしている。たとえば、水の神の信仰などがそうである。この信仰を通じて、水利用にあたっての水についての人びとの考え方が類推できる。
|