本年度は、昨年度から引き続いて購入した日本ショッピングセンター協会発行の『SC JAPAN TODAY』の目次をデータベース化するとともに、その内容の一部を分析した。さらに主要紙の記事検索サービスを利用して、ショッピングセンター関連記事のデータベース化の作業を行い、ウェブ上のデータと調査も実施した。次年度も継続予定のこれらの作業を通じて、1970年代には地域コミュニティの核としての役割を期待され、自認してきたショッピングセンターが、80年代には文化の発信地を志向し、90年代にはエンターテインメント空間をめざし、2000年代以降は社会構造の変化に伴う新たなマーケットと地域環境の創出をめざすというように、日本社会とその社会・文化・地域環境の変容と相関しつつ変化してきたという仮説を得た。 これらの仮説を検証するため、1969年に日本最初の郊外型ショッピングセンターとして建設された玉川高島屋ショッピングセンターと、1981年にう船橋ヘルスセンター跡地に第一号店が開業した後、各地に多様な展開を見せてきたららぽーとを対象とするフィールドワークを行い、1960年代から現代にいたるショッピングセンターの変化を、立地、空間構成と演出の形態、周辺の都市空間との関係、そこで提示される消費とライフスタイルの意味論などの視点から分析した。その結果、上記の仮説はおおむね首肯されるとともに、ショッピングセンターの立地自体が郊外化、モータリゼーション、都市における娯楽生活の変化などの社会・文化的な変容を通じて社会的に生産されてきたことが明らかとなった。またさらなる課題として、郊外型ショッピングセンターが存在する社会的場としての「郊外」の開発とそこに付与される意味を、社会地理学、生活文化、市場という異なる側面から調査分析する必要も明らかとなった。
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