本年度は本研究計画の最終年度として、過去2年にわたり続けてきた文献資料の調査・収集と整理・分析、ショッピングセンター・ショッピングモールのフィールドワークを継続すると共に、これまでの研究を通じて見出された知見、論点を整理し、それらについてションビングセンター・ショッピングモール等の巨大商業施設を開発・経営する主体である企業である三井不動産、三菱地所、東神開発、パルコへのインタビュー調査を行った。さらに研究を補完するため、社団法人日本交通計画協会企画課主任・和泉貴大氏へのインタビューや、幕張ベイタウンのフィールドワークと住民であるニッセイ基礎研究所主任研究員・土堤内昭雄へのインタビューも行い、地方都市や大都市周辺部の巨大開発地区についての情報の収集と意見交換も実施した。 これらの作業を通じて、(1)日本最初の郊外型ショッピングセンターである玉川高島屋、80年代の消費文化をリードしたパルコ、現代の巨大ショッピングセンターの基礎を築いたららぽーとが共に、高度経済成長末期の都市と社会の変容に対応する空間と消費文化の創出という同一の課題に対応する企業の戦略として生み出されたこと、(2)商業資本系の商業施設と不動産・ディベロッパー系の商業施設とでは、消費空間の開発・生産に対する視点に違いが見られ、不動産・ディベロッパー系の企業の場合、都市空間の広がりのなかでの立地の価値を高める選択肢の一つとして巨大商業施設が捉えられており、物販を担うだけでなく、新たな生活の時間と空間の創出となるような施設の建設を目指していること、(3)巨大商業施設だけでなく、居往空間も含む街自体が大規模に生産される現代において、かつてカステルが指摘したような「集合的消費」現代的な形が、住民や既存商店街も含めて問われていることなどが、明らかになった。 なお、これらの成果を来年度中に著書として出版するための作業も進行している。
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