研究概要 |
2007年末には在日ブラジル人人口は316,967人であったが、2008年の世界経済不況後、約10万人が帰国し、2011年度末には210,032人に減少した。しかし、日本における経済不況にも関わらずブラジルへ帰国せず、日本での生活を続けている20万以上のブラジル人がおり、その中、日本で生まれ育ち、基本的に日本の教育のみを受けている児童生徒、そして若者が多く含まれている。今年度の調査は、この若者たちに焦点を当て、現時点では日本の大学に進学した9人のブラジル人の若者にインタビュー調査を実施した。調査期間及び調査地は24年4月~6月、静岡県浜松市及び東京であった。調査対象者9人中、7人はポルトガル語が流暢であり、インタビューもポルトガル語で行ったが、2人は日本語でインタビューを実施した。 本調査の暫定的な結果であるが、9人全員が日本の小中校学校の経験の中、外国人として何らかの差別を受けおり、小中学校では、いかに自分はブラジル人であることを隠そうとしていたことが明らかになった。彼らは名前を日本名のみを使用したり、家に友達を呼ばなかったりして、ブラジル人家庭から日本人の友人を離していたのである。しかし、高校、そして大学に進学してからは、自分がブラジル人であることに誇りを持つようになった若者が増えてくる。それは、周りからもポルトガル語ができて「かっこいい」、「ブラジルのことを知っている」といった、日本人にない「もの」で外国人だからこそ持っている「文化資本」が、今度は「ブラジル人」であることがマイナスではなく、「プラス」の働きをするようになったことが明らかになった。今後の課題として、この意識の変化に注目をしていきたい。
|