研究概要 |
本年度は、アメリカの自動車産業における徒弟訓練にかかわる資料の収集と分析をおこなった。本年度、とくに力を入れたのは、自動車メーカーの労働協約の収集と分析である。アメリカの自動車産業では、自動車メーカーと労働組合が共同で、専門技能者を養成するために70近い徒弟訓練プログラムを有しているが、徒弟訓練を希望する者の選抜の仕方、徒弟訓練の具体的内容、徒弟期間中の経費や賃金の扱い、徒弟修了者の入職ルールなどは労働協約で規定されている。さらに2009年にアメリカの自動車メーカーがあいついで労働協約の大幅な改訂をおこなったため、専門技能者にかかわる規定の変化を分析する必要性が生じた。 労働協約の分析を通じて明らかになったのは、とくに以下のことである。アメリカの自動車メーカーでは、専門技能者間で職種の縄張りが強く、ときにそれがフレキシビリティーを欠くと批判されてきたのであるが、今回、一部メーカーで、職種間の垣根が大きく取り払われることになった。またそのために必要な追加的な訓練の規定が新たに設けられることになった。これは、日米の専門技能者の機能の違いを劇的に小さくするものと考えられる。こうした分析の成果の一部は、2009年,「フォード自動車における労働条件引き下げの実態とその影響:2009年におこなわれた労働協約の改訂を中心にして」,『立命館大学産業社会論集』,第45巻第2号,pp.1-14および「フォーディズムの終焉?:米3大自動車メーカーにおける労働条件の大幅見直しの実態とその含意」,社会政策学会 第119回大会(11月)学会発表などにまとめられている。
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