研究課題
本年度は、昨年度にひきつづきアメリカの自動車産業における徒弟訓練にかかわる資料の収集と分析をおこなうとともに、欧州における徒弟訓練制度の発展について資料の収集、整理と分析をおこなった。前者について言えば、アメリカの自動車産業では、2009年におこなわれた労働協約の途中改訂によって、熟練職種の統合が進められている。本年度は、昨年度に引き続き、その実態について資料の収集、整理と分析をおこなった。分析の結果、職種領域の拡大がおこなわれているが、任務が拡大される領域については追加的な専門訓練がおこなわれており、専門性という点についてはかならずしも希釈化が生じているわけではないこと、またその一方で、業務の拡大により、日常的な作業量は実質的な増加を見ている可能性があることが明らかとなった。後者について言えば、イギリスでは、熟練職種が細かく分立し、それぞれが強く権利主張をしたため技術革新の停滞をまねいた面があるが、ドイツでは、産業全体の利害を重視し、職種の特殊利害を否定する産別組合の思想が強く、技術革新の導入にも積極的な事情が明らかとなった。このことは、徒弟制度と技術革新がかならずしも相反するものでないことを示すもので、日本の職業訓練制度の今後を考える上で重要な視点を提供するものである。
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社会学評論
巻: Vol.61, No.4(査読誌からの依頼論文) ページ: 440-453
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