本研究課題は、1917(大正6)年に本格的に始まった戦前期における日本の安全運動の全体像を明らかにするための必要不可欠な研究基盤を構築することに主眼を置くものである。 具体的には、戦前期日本の安全運動、とりわけ、その運動の誕生期において主力となった労働災害防止運動で中心的役割を果たした蒲生俊文(1883~1966年)の足跡の解明に重点を置いたうえで、彼が残した未公開の史料等(以下、蒲生史料と記す。)の発掘、収集、保存、整理等をおこない、また、その成果を学会、研究会、論文、報告書、ウェッブ・サイトで公表することにある。そのなかでも特に、戦前期安全運動の中心人物でありながら、これまで詳細が不明であった蒲生俊文の履歴の解明を重点課題と位置づけながら取り組むことにある。 こうした課題の要請を踏まえて、最終年度(3年目)にあたる本年度は、これまでの2年間の成果である、蒲生史料の発掘、収集、保存、整理によって明らかになった点を分析し、またそれらの成果を論文で発表すると同時に、学会その他の機会において積極的に発表することを目標とした。とくに蒲生の略伝は、本研究課題の総括的な成果として論文として刊行する。 その結果、論文4本および学会発表4回をおこなった。そのうち、論文「蒲生俊文小伝」(『近畿大学法学』第59巻第2-3号、2011年12月、81~115頁)は、本年度のみならず、本研究課題の成果を最も包括的に示すものである。
|