研究計画に基づき、平成23年度はデータの分析、モデル地域研究および文献研究を行った。データの分析においては、平成21年度に行ったアンケート調査データのクロス表分析、単回帰分析、T検定などの基礎的分析を行うとともに、ワークフェアによる就労による自立施策が促進される中で現在の生活満足度の規定要因について、取入や配偶関係などの基本属性や、子どもとの交流や養護、しつけ項目のより合成した子どもとの関係、子育て感、ワーク・ファミリー・コンフリクトなどの諸要因を説明変数とした重回帰分析を行った。その結果、ひとり親家庭の母親の場合は、共働き家庭の母親よりも、子どもとの関係や、子育て感が生活満足を強く規定していることが明らかになった。モデル地域研究については、平成22年度より調査研究地域である熊本県がひとり親等応援事業を開始し、在宅就労支援のみならず、キャリアアップ支援講座や子どもの教育対策事業など県独自に積極的な取り組みを開始したので、県の担当者より事業の背景や内容、進行状況などについて直接詳細に話を聞くことができた。また、本学は熊本市との包括協定により地域のひとり親家庭児童への学生による訪問援助事業を行っており、モデル地域の事業と位置付けることが出来る。これらデータ分析やモデル地域分析、さらに文献研究から得られた知見については、2011年9月に開催された日本家族社会学会大会にて自由報告を行った。さらに、研究代表者の勤務校のある熊本市の慈恵病院には「こうのとりのゆりかご」と呼ばれる日本で唯一の赤ちゃんポストが設置されており、利用者は離婚や未婚の母子家庭が多いことが判明している。ひとり親の子どもの育ちを支える地域支援の在り方として、そのモデルとなったハンブルクにあるE.V.シュテルニパルクの"BABBY KLAPPE"やその他E.V.などを訪れ、関係者よりドイツにおける先進的な母子福祉の在り方についても現地フィールドワークを行い、地域で母子を支える視点違いについて比較検討を行った。
|