本調査の昨年度のとりくみでは、これまで十分に把握されてこなかった、小数派難民申請者の生活・心理的状況の概要を把握するととを目的に、日本で生活している難民申請者のうち、同国・同地域出身者で構成するエスニック・コミュニティをもたない者の状況を把握するためのパイロット・インタビューを実施した。 日本で生活する難民を対象とした調査研究は、インドシナ難民を中心とする日本での居住が既に認められた者・グループを対象としたものがほとんどで、近年とりわけ増加している条約難民及び申請者の状況を把握する試みは少なかった。今回の調査は、本調査に向けてのパイロットであるため、生活・心理的状況を大まかに把握したにすぎないが、近年では、難民申請者の多国籍化がすすんでおり、数が少なく集団化されない難民申請者に焦点があたることはほとんどなかったため、今後も一定の数で訪れると推測される小数派難民申請者の支援を効果的・効率的なものにしてくための枠組みを構築するうえで重要な資料といえる。 また、日本における公的な難民受入れ施策は、未だにインドシナ難民を対象にしたスタイルが中心となっており、現代のように難民が多国籍化している状況に十分対応しきれていない。そこで、受入れ国での生活適応を支援する先進的なとりくみを学び日本への応用を検討するために、難民申請者の支援では多くの経験をもつ、オーストラリア(メルボルン・シドニー)の支援機関を訪問し、メルボルン市のNGO「the Victorian Foundation for Survivors of Torture」の難民申請者のメンタルヘルスケアにかかわるスタッフのトレーニングプログラムをはじめとした、難民申請者の支援の方法や支援スタッフのトレーニング方法の情報を中心に情報を収集した。
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