難民の社会適応過程の把握のため、難民認定申請者を対象としたグループワークでの参与観察、支援団体及申請者個人への聞き取り調査をおこない、日本での生活実態を把握するとともに、社会適応支援におけるグルプワークの効果について調査をおこなった。 平成23年度中の個別聞き取り調査は、11名、12回のインタビューを実施し、日本を選んだ理由や入国前と現在での日本に対するイメージの変化、具体的な生活困難がなどを把握した。グループワークへの参与観察は7回おこなった。また、支援団体への聞き取りも3名のスタッフにグループインタビューを7回実施した。 まず、日本の難民認定申請者の中で、エスニック・コミュニティがない、あるいはあっても所属できない者は、社会・心理的にも不安定な状態におかれやすいことが明らかとなった。さらに、その支援として、エスニック・コミュニティに変わるグループを形成することで、より効果的な社会適応が促されると考え、グループワークへの参与観察と個別インタビューからその効果を検証してきた。難民のグループワークには、情報を得ることのできる「情報提供機能」や「教育機能」、同じ境遇を共有できる仲間と励まし合うという「情緒的支援機能」があることが確認できた。一方、就労するとグループワークへの参加が制約されてしまうため、メンバー間での就労斡旋はほとんどないこと、さらに経済的に困窮している者が多く、金銭や生活用具の援助といった「道具的支援機能」は望めないこと、交通費が賄えないことなどからグループワーク以外での付き合いが制限される等の課題を抱えている。加えて、母語の違いがあるために「言いたいことを全て語れていない」といった不満もみられた。 しかし、同じ環境におかれる者同士による情緒的支援機能や実際の生活体験に基づく情報提供は、日本人支援者が個別支援でおこなうものよりも各個人の満足感が高かった。
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