本研究の目的は、要介護者に対して必要な介護及び医療が適切な連携と役割分担のもとに確保されるよう、医療と介護の確保に関する制度の相互関係について日独比較を行い、わが国での具体的な改善策を示すことにある。 このため、本年度は、昨年度の研究成果を踏まえ、相互に連携のとれた適切な医療・介護サービスの供給を確保することを目的としたサービス供給システムの構築及びサービス従事者間の役割分担の見直しについて検討を深めた。 その成果のうち、専門職の養成教育や役割分担などに関しては、ドイツ等の介護政策をテーマとした著書において発表した。また、2010年10月に開催された社会政策学会第121回大会では「高齢者ケアの供給システム」に関するテーマ別分科会をコーディネートし、その中で、これまでの本研究の成果に基づき、「ドイツにおける医療・介護の連携と専門職の位置づけ」に関する研究報告を行うとともに、医療・介護の連携のとれた包括的なサービス供給の確保に関して、専門家との間で討論を行った。 さらに、2010年11月にはドイツにおいて本研究費補助金による1週間の現地調査を行った。具体的には、ベルリン市でドイツ連邦保健省、連邦保険医協会、地区疾病金庫連邦連合会などを訪問し、医師の確保及び看護・介護職の役割強化のための対策に関して、専門家からのヒアリング及び情報収集を行った。また、ビーレフェルト大学及びオスナブリュック大学を訪問し、分野を越えた包括的なサービス供給システムや退院時のマネジメントの実態などに関して、研究者との意見交換及び情報収集を行った。 本年度においては、以上の研究活動を通じて、来年度の研究取りまとめに向けた重要な成果を得ることができた。
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