本研究は、次の点を明らかにし、既往の児童福祉研究で定説の誤りであることを確認した。 第1に、戦時下日本では「人的資源」として児童を捉える思想が、児童保護を推進するイデオロギーとなったが、それに抵抗した菊池俊諦の「児童の権利」論などがあったこと。 第2に、戦後、児童福祉法は、「人的資源」としての児童観を克服して「児童の権利」思想を確立したものと見なされてきた。しかし、むしろ、児童福祉法案の起草者は、戦時下の「人的資源」論を援用し、労働力の再生産のメカニズムの一環として児童福祉法を構想していたことを明らかにした。
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