研究の目的は、高齢者虐待事例に対する新しい支援方法のモデルを作成し、その実用性を検証することである。H21年度は、高齢者虐待事例に対する新しい支援アプローチとして、子ども虐待事例に対する安全サイン・アプローチやクリティカルアプローチを検討し、安全サイン・アプローチを援用して「高齢者版危害・安全アセスメント・シート」を作成した。そして、このシートの実用性についての感触を得るため、また、熟練ソーシャルワーカーの相談・通報時から訪問調査時、介入時の対応技法を改めて学ぶため、高齢者虐待防止研修の講師を務めた経験をもつ地域包括支援センター職員や市町村高齢者虐待防止担当職員計3人にヒアリング調査を実施した。これらの作業と調査を通して、有能な熟練職員は、安全サイン・アプローチの理論的基盤である解決志向アプローチの基本哲学と面接技法に近い対応をすでに行っていること、また、実践現場における「高齢者版危害・安全アセスメント・シート」の活用可能性が高いことを確認することができた。そこで、このシートに加えて、「安全探しシート」「安心づくりシート」「プランニングシート(話合い用)」「プランニングシート(機関用)」を作成し、これらを活用して行う「安心づくり・安全探しアプローチ」を開発した。このアプローチが従来のアプローチと異なるところは、援助関係を築きにくい高齢者や養護者との関係づくりを、各ツールを使った面接法によって行うというものである。 当初平成22年度に予定していた、本アプローチの実用性を確認するための研修(対象:地域包括支援センター職員や行政職員等)を、22年3月に杉並区と富山市で実施することができた。研修の際に実施したアンケート調査では、本アプローチについての高い評価を得ることができた。
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