1.研究目的と方法 居宅における高齢者虐待の中でも、特に、介入を拒否しがちな虐待者に対する有効な介入アプローチを開発することを目的とし、M-D&D(修正版デザインと開発)に基づいて新しいアプローチをデザインし、その評価を行う。 2.研究の成果 H23年度は、作成した「安心づくり安全探しアプローチ(AAA)」による研修の実施を引き続き行うとともに、H21、H22年度に実施した評価研究結果を分析する作業を行った。(1)AAAの短期的効果;AAAによる研修によって、援助職の対処可能感が改善したかどうかを、研修前後の質問紙調査で調べた結果(N=311)、対処可能感の合計得点は、研修前は25.9(S.D.=3.7)、研修後は28.0(S.D.=3.6)であった。この変化には有意差が見られ、AAAによる高齢者虐待防止研修が、援助職の対処可能感を改善する効果が示された。ただし、所属組織や職種、虐待事例対応経験数等では有意差が見られなかった。(2)虐待事例に対するAAAの効果;AAAを用いて介入を行い、面接ごとの経過記録シートを付けた11事例について、記録者がつけた、a虐待する家族との関係性と、b虐待する家族の状況変化への動機づけ、の面接ごとの点数の変化パターンを分類したところ、aの変化のパターンは、8事例のうち5事例までが(ア)直線的改善パターン、3事例が(イ)V字型改善パターンを示した。bの変化パターンは、8事例のうち4事例が(ア)直線的改善パターン、3事例が(イ)V字型改善パターン、1事例が(17)直線的悪化パターンであった。これらは、AAAが虐待する家族と援助職の話し合える関係づくりと、虐待する家族の変化への動機づけ改善に効果のある介入アプローチであることを示唆している。 以上のことから、AAAは虐待事例への介入アプローチとして有用性をもつと考えることができる。今後の課顎は、データを増やして再検証する.とともに、本アプローチの普及方法を検討することである.
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