本研究の目的な、子ども家庭福祉実践における「リスクとリジリエンスの視座」の有効性を理論的に明らかにし、この視座に関する実証的研究をとおして、実践レベルにおける援助のモデルを提示することである。初年にあたる今年度は、以下の2点に焦点を当てて研究を行った。 第一は、精神医療、心理学、教育等の子ども家族福祉の隣接領域におけるリジリエンスの概念定義の整理である。その結果として、リジリエンスの概念定義は研究領域や研究者によって解釈が異なるものの、一般に、レジリエンスの定義には、(1)人間の発達を阻害するような危機的な状況に直面していることと、(2)そうした状況に置かれながらも良好に適応すること、という2つの要件が含まれていることが明らかになった。 第二は、子ども家庭福祉実践において「リスクとリジリエンスの視座」がもつ有効性についての考察である。具体的には、近年の子ども家庭福祉領域における諸問題を文献等から明らかにし、実践において「リスクとリジリエンスの視座」を活用することによって、これらの諸課題への対応に望ましい変化がもたらされることを検討した。 また、アメリカの子ども家庭福祉実践において「リスクとリジリエンスの視座」を提唱したノースカロライナ大学スクールオブ・ソーシャルワークのフレイザー(Fraser)博士にこの視座の概念および有効性についてヒアリング調査を実施した。 以上の研究成果は、来年度以降の実証的研究の基盤として十分な役割を果たすものと考える。
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