本研究の目的は、ソーシャルクオリティというヨーロッパで生まれた概念をわが国の地域福祉で活用するためのモデルを構築することである。平成23年度の研究実施計画では忌地域の多層的な分析を進めることと、実践のためのモデルの構築をはかることを掲げた。それぞれの内容について報告する。 地域の多層的な分析については、ミクロレベル、メゾレベル、マクロレベルを設定し、それぞれに調査活動を進めた。ミクロレベルでは、大阪で行われているコミュニティソーシャルワークの個人支援の事例を取り上げて、その関係資料の収集とともに、コミュニティソーシャルワークの実践者と検討会を催すことができた。地域での個人支援の方法について、ソーシャルクオリティの考え方を用いることで、新たな視点を組み込むことができることが分かった。メゾレベルについては、地域で福祉活動を行っているリーダーからヒアリングを行い、どのような取り組みがなされているかを把握した。地域活動が、システム側から動員的に進められるのではなく、住民の生活世界の側から内発的に展開される方法を確認した。マクロレベルにあたる地域社会に関しては、特定の小学校区を取り上げて、そこでのソーシャルクオリティについて調査、検討を行った。ソーシャルクオリティによる地域調査が過度な専門性をもつものではなく、住民参加型で進めることができる可能性があることを示唆された。 実践のためのモデルの構築に関しては、研究報告書を作成し、ソーシャルクオリティの中でも特に生活世界の側面に注目をすることで、地域福祉実践のあらたな展開を導き出すことができた。
|