研究概要 |
<研究1>中高年の知的障害者(男性、40代、ダウン症)に対して事例的に,行動観察とともに唾液アミラーゼ活性値を指標としたストレスの測定を実施し、日中活動のプログラム(運動)の有無、及び、プログラムの前後における唾液アミラーゼ活性値の個人内変動について検討した。本事例では、唾液量の少なさによる測定エラーが多く生じたことから、歯科医の受診により唾液分泌を促す漢方薬が処方されることとなった(副作用等を心配し服薬はしていない)。このため、後半の測定は見合わせることとなった。ダウン症者の加齢によるものと考えられるが、他の中高年期のダウン症者についても同様の問題が生じやすいのかどうか基礎資料を収集していく必要性が確認された。 <研究2>「オープンカレッジ東京2009(以下、OCT)」受講の成人期の知的障害者7名(内、ダウン症者5名)を対象に,4回のOCTの活動の前後に簡便な自己評価とともに唾液アミラーゼ活性値を指標としたストレスの測定を実施した。活動終了後に唾液アミラーゼ活性値が下降44%、上昇32%、変化なし24%であり個人差が大きいことが示された。また、唾液アミラーゼ活性値と自己評価についても両者の間の明確な傾向を明確に読み取ることは難しく、また個人差もあるようであった。しかし、自分が感じた「疲れ」についてはアミラーゼ活性値の下降とは最も関係が少ない傾向が、一方、「上手にできた」と回答した者のうち3名の値が下降しており、「上手にできた」という活動の達成や「楽しかった」と感じることのほうが「疲れ」よりはアミラーゼ活性値に関係する傾向にはある。今後はデータ数を増やし明確な傾向の有無も含めて分析していくことが必要である。
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