研究最終年度として、以下のデータの総合的分析と考察・まとめを行い、報告書の作成を行った。 (1)ダウン症を中心とする知的障害者の唾液アミラーゼ活性値のこれまでのデータ(オープンカレッジ東京参加者、入所施設利用者、通所事業利用者、在宅者)について、全体のデータを総合的に分析・考察した。本研究の対象となった知的障害の人は、明らかに加齢や疾病等による心身の機能の低下を示し、唾液アミラーゼ活性値の変化の解釈が難しい人もいた。その一方で、デイサービスにおいて作業に従事できる等比較的元気で能力のある人たちの中にも、唾液アミラーゼ活性値が高い人も多く、見た目以上に緊張や疲労といったストレスを感じている人がいることが分かった。知的障害者は認知能力の制約から環境の変化に柔軟に対応することや、緊張や不安への対処方法を身につけることが難しいため、健常者以上にストレスに晒されやすかったり、ストレスの影響を大きく受けやすかったりすると考えられる。また、ストレスを感じる状況は、一人一人異なっており、個々のストレスの特徴を把握したきめ細かな対応が必要と考えられた。 (2)ダウン症を中心とする知的障害者の高齢化と健康、知的障害者のストレスの評価と支援について、国内外の文献を収集し分析・考察した。知的障害者の高齢化を背景として、健康面での問題を抱えている知的障害者や、精神機能の低下による行動障害を有する知的障害者など、多様なニーズのある知的障害者への対応の検討の必要性が考察された。 (3)本研究の成果を2013年度の国際知的障害学会(IASSID)で発表するための抄録の作成・投稿を行い、平成13年2月に発表が受理された。
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