研究概要 |
本研究の目的は,コミュニケーションに障害をもつ高齢者と,介護の専門職である介護士とのコミュニケーションの質を向上させるために,介護士が適切なコミュニケーションスキルを習得できるよう,具体的な支援の方法を確立していくことである. そこで本研究の初年度にあたる本年度は,まずこれまでに研究代表者らが開発してきた「介護士のコミュニケーションスキルアッププログラム」内容の見直しおよびデータ分析を行った.その見直したデータを元に,新たに本研究の基礎となる,老人保健施設での介護士と学生(言語聴覚士養成大学4年生),介護士と利用者との会話場面のデータ収集を行った.その後,会話場面の逐語録を作成し分析した結果,会話相手のコミュニケーションスキルによって.利用者の発話量や話される内容,また,会話の継続性にも変化がみられた.特に注目すべき点は,会話相手が,共感の表現として頷くだけではなく,「そうですね」などの共感のことばに続けて,利用者の話した内容を再度繰り返して確認したり,さらに気もちを代弁するなどの表現を付け加えると.利用者はさらに話しを続け,より深い感情などを伝える傾向がみられたことである. これは,対人援助技術の重要なスキルとしてあげられる「共感」に関して,介護士が習得すべきコミュニケーションスキルの一つとして,今後の支援に有効な示唆が得られたといえる. また,会話場面を撮影したビデオを見直すことで,学生や介護士は自分のコミュニケーションスキルを客観的に評価することができ,さらに言語聴覚士の専門的支援を受けることで,その後の気づきの内容がより具体的になることが示された. 以上の点が本年度の研究成果である.来年度はさらに詳細なデータ分析を実施し,支援の具体的内容の検討とデータの収集を継続していく予定である
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