研究概要 |
本研究の目的は、コミュニケーションに障害をもつ高齢者と、介護の専門職である介護士とのコミュニケーションの質を向上させるために、介護士が適切なコミュニケーションスキルを習得できるよう、具体的な支援の方法を確立していくことである。 そこで、2年目の本年は、これまでに収集したすべての会話の逐語録を完成した。さらに、これまでの支援効果をみるために、支援終了3ヶ月後に、これまでに会話データ収集を行ってきた利用者と介護士の会話データを収集し、逐語録を作成した。 また、本年度は昨年度の研究成果を日本認知症ケア学会、日本コミュニケーション障害学会およびThe 14th Biennial Conference of the International Society for Augmentative and Alternative Communication. (Barcelona, Spain)にて発表した。 主な成果の内容は、会話相手が,共感の表現として頷くだけではなく,「そうですね」などの共感のことばに続けて,利用者の話した内容を再度繰り返して確認したり,さらに気もちを代弁するなどの表現を付け加えると,利用者はさらに話しを続け,より深い感情などを伝える傾向がみられるということ。さらに、会話場面のビデオを見直すことで,会話相手となった学生や介護士は自分のコミュニケーションスキルを客観的に評価することができ,さらに言語聴覚士の専門的支援を受けることで,その後の気づきの内容がより具体的になること。また、会話時にジェスチャーなど非言語手段を併用することで、認知症者との会話の継続性が高まることなどである。 今後は、逐語録の詳細な分析および、会話場面を介護士や言語聴覚士などに客観的に観察してもらい、会話相手のコミュニケーションスキルに関する評価を行い、支援の効果とその内容および課題を分析していくことである。
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