本研究のテーマは「社会福祉援助実践における『省察』の構造と過程に関する研究』である。この研究の目的は、社会福祉援助実践を担う援助者が、実践活動において生じる葛藤や困難場面においてどのような「省察」行為を行っているのかを明らかにするとともに、独自の研修プランや教育方法を提案することである。そもそも価値実践といわれる社会福祉援助実践にはさまざまな価値葛藤を生じやすい状況におかれることが多いため、価値葛藤への対処がうまく機能しないとバーンナウト(燃え尽き症候群)や離職が高率で生じてしまう。しかし、他方で価値葛藤を乗り越えたところに援助者としての成長があることもまた事実である。従って、さまざまな価値葛藤といかに対峙し、対処するかが重要な実践課題となってくる。本研究ではこの実践課題に対し、D.ショーン(1983)の「省察的実践」の考え方を取りいれながら、独自に3つの側面から「省察」行為を理解する。ひとつは「省察」の契機となる感情経験、ふたつ目に「省察」の認知的側面、最後に「省察」に基づく行動的側面の3点である。 そこで平成21年度は、社会福祉援助実践の理論であるソーシャルワーク理論が求める感情規則とは何かを考察することを主目的とした。具体的には約100年のソーシャルワーク理論史(特にソーシャル・ケースワーク)における感情規則の言説分析を行った。現在、投稿先を検討中である。これによってワーカーが感情規則によって葛藤経験を高頻度で経験される職種であることを指摘した。この論文は、「感情規則」という側面からソーシャルワーク理論史を再検討するというあらたな試みとして位置づけることができる。
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