本研究の目的は、社会福祉援助実践を担う援助者が、実践活動において生じる葛藤や困難場面においてどのような「省察」行為を行っているのかを明らかにするとともに、独自の研修プランや教育方法を提案することである。そもそも価値実践といわれる社会福祉援助実践にはさまざまな価値葛藤を生じやすい状況におかれることが多いため、価値葛藤への対処がうまく機能しないとバーンナウト(燃え尽き症候群)や離職が高率で生じてしまう。しかし、他方で価値葛藤を乗り越えたところに援助者としての成長があることもまた事実である。 従って、さまざまな価値葛藤といかに対峙し、対処するかという「省察」が重要な実践課題となってくる。 平成22年度は、社会福祉実践における援助者の「省察」の構造と過程を明らかにするための調査を実施した。具体的には、こども虐待という葛藤の高い社会福祉問題を抱える母子への支援を行っている援助者へのインタビューによって、どのような価値葛藤やそれにともなう感情を経験したのか、それらを経験しながらどのように援助し続けたのかを明らかにした。これらの結果は、まさに社会福祉実践を行う援助者の一連の「省察」経験であった。
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