最終年度である平成23年度は、認知症患者を在宅で介護している家庭の介護者と居宅介護支援事業所やデイサービス等、認知症患者が利用している介護サービスの提供事業所との間での情報連携およびコミュニケーション連携を行う情報システムを用いた実証研究を行い、その評価を行った。情報連携は介護サービスを利用している場での利用者の様子や言動などを介護事業所スタッフが入力、登録し、これを居宅介護支援員や他の介護事業所、また介護家族と共有しあい、コミュニケーション連携は必要に応じ報告や相談を同システム上で行うという方式を取った。当該システム利用の有用性の効果測定としては、介護者の心理的負担、特にストレスの軽減に着目し、実証の前後に既存の評価尺度と、別途作成した介護者の心理的負担に関する設問を用いた。その結果、共有された登録情報の件数が実際のサービス利用頻度により近い件数であること、共有された情報の内容が介護家族の知らない本人状況を伝えていることが、介護者の心理的負担、特に不安の低減傾向をもたらすことが示された。 ただし、実証期間が有効性の評価に十分な長さであるとは言い難いこと、また実証に参加協力を得た事例件数が少なかったといった限界もあるため、今後はより多くの事例件数をもって、中長期の実施期間をもって評価を行う必要がある。既存の評価指標に代わる評価指標の策定は、より介護者の心情に沿った表現であるとの評価を介護家族から得たが、指標としての妥当性についても十分な期間と事例件数を持って検証する必要がある。
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