2010年度までに構築した、全国の市町村(保険者)の「介護保険事業状況報告」(厚労省)等を使用した2002、2004、2005、2006、2007年度のDBに、2003、2008年度のデータを新たに付加し、居宅4サービス((1)訪問介護、(2)訪問看護、(3)通所介護と通所リハを足したもの、(4)短期入所)、施設サービス、施設+居住系サービス(特定施設入居者生活介護)の利用状況を偏差値化した指数及び人口等の基礎データ、医療・福祉資源データを分析することで、地域差を明らかにした。2006年度以降については、地域密着型サービスの利用状況を偏差値化した指数も分析に含めた。地域属性とこれらの指数の関係性についても分析を行っている。また、居宅4サービス利用指数が経年でみて「低」のグループに属している3市町村にヒアリグ調査を行い、地域ケアシステムの現状を分析している。さらに、居宅4サービス利用指数が「高」「中」「低」の市町村のケース・スタディ結果を比較し、「出来る限り住み慣れた家庭や地域で生活を送ること」を可能にする地域ケアシステムの構造を提示した。以下主要結果を記述する。 施設サービス利用指数の分布を行政区分別に経年でみると、各年度とも、政令指定都市・特別区は他の区分に比べて指数45以下の低い方に多く分布している。また市、町、村、広域連合ともに指数50近辺に分布のピークはあるが、全体的に非常に広く分布しており、グループ内の差が大きい。施設・居住系サービス利用指数も、各年度とも、政令指定都市・特別区以外は非常に広く分布しており、グループ内の差が大きい。地域密着型サービス利用指数は、政令指定都市・特別区、市、広域連合に比べて、町・村は指数が高い方に多く分布している。保険者別の指数の分布を属性別に高位~低位の5グループに分けてみると、施設サービス利用指数が高いのは、「人口規模が小さい」「高齢化率が高い」「財政力指数が低い」グループである。地域密着型サービス利用指数については、「人口規模が小さい」「人口密度が低い」「高齢化率が高い」「財政力指数が低い」「人口10万人あたりの医師数が少ない」グループの指数が高くなっている。居宅4サービス利用指数が「高」「中」「低」の市町村のケース・スタディの比較からは、居宅サービスの利用水準が高く、出来る限り住み慣れた家庭や地域で生活を送ることが可能になっている地域ケアシステムは、地域の現状を把握した上で、限られた資源の中で最も効果が上がる方法が選択され、老人保健福祉計画・介護保険事業計画に組み込まれている。同時に、居宅サービスの提供に関わる機関・施設がネットワークを組み、高齢化の進行や重度の要介護者の増加等の変化に対応しつつ、介護保険内外の適切なサービスの組み合わせが総合的かつ継続的に提供されるケアマネジメントが行われている。また、看取りへの対応ができていることも重要な要素になっている。
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