本年は初年度の研究成果の上にさらに成年後見制度の有効性、有意義性の検討とソーシャルワークの関連性を実証的に検証することを目的として研究を行った。さらに新たな取り組みとして、成年後見制度の社会化を促進するため市民後見人活動を研究対象とし実態的な検討、検証を進めるよう実態調査研究の基礎を築いた。 1) 成年後見人養成研修修了者(社会福祉士)を対象とした権利擁護に関する意識調査 社会福祉士会開催の成年後見人養成研修の修了者3名に対しインタビュー調査を実施した。主な調査内容は成年後見人受任状況、具体的な活動内容、権利擁護と後見活動に関する見解と意見、ソーシャルワークの捉え方等である。調査結果が逐語録としてデータ化し、質的な分析、検討を行っている。 2) 成年後見活動のケース・スタディー 成年後見活動の具体事例を基に、成年後見制度利用の有効性、有意義性と限界や課題を整理、分析を行った。特に本ケースから、高齢期知的障害者への支援の今日的な課題を捉え、ソーシャルワークとの関連性を一層検討、要請することの必要性を明確化したいと考えている。 3) 市民後見活動の実態化に向けた取り組み 成年後見制度社会化を実効的に促進するため、市民後見人活動の可能性に着目し、その実体化にむけた具体的な取り組みに着手した。市民後見人活動の母体となるNPO法人を組織化、さらにS市に対し「市民による市民のための成年後見まちづくり」を協働事業として提案し、平成23年からの3カ年事業(見込み)として採択された。来年度から活動を本格的にスタートさせるため専門家団体(弁護士、司法書士、行政書士、社会福祉士)および関連機関(社会福祉協議会、家庭裁判所等)との成年後見制度普及に係る協議の場を設定する旨計画している。併せてS市民対象に成年後見制度に関する調査実施に向け準備を進めている。 1)、2)調査に関しては結果を精査検討している。3)については来年度具体的な調査研究が実施できるように継続的に取り組んでいきたい。
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