本年は研究期間の最終年度にあたり、成年後見制度の社会化の有意義性、有効性をさらに検証するとともに、併せて課題や問題点等を明確化し、今後の研究課題につなげるために実践的、実証的に研究を行った。特に昨年度から準備に入った市民後見活動の組織化と実態調査を実施し、S市職員を対象としたセミナーを実施するなど、成年後見制度の社会化の方策に具体的に取り組むことができた。 1)成年後見制度の従事する社会福祉士への聞き取り調査 成年後見活動の支援内容に関する調査を継続した。後見活動の具体的内容の分析を行うとともに、利用者の生活や支援内容の変化に焦点をあてて聞き取りを行い、課題や問題点を明確にすることを試みた。特に高齢知的障害者のケースでは、本人の心身の状態の変化に伴い、利用する施設サービスについてどのような適確性を担保するかという課題がうかがえた。調査結果は質的に分析し、公表できる形にまとめている。また分析手法のスキルを向上するために質的研究ソフトウェアの活用を開始した。 2)市民後見活動の実態化 S市における「市民による市民のための成年後見町づくり」事業が平成23年度からの3力年計画としスタートし、今年度は成年後見制度の利用促進を図る目的でS市民を対象とした郵送によるアンケート調査を行った。調査実施期間は平成23年7月で、調査対象者はS市住民台帳を基に50歳を分岐点として5歳区分で75歳までの世帯主3000人とした。回収率は57%で1707名分のデータを得ることができた。この実績をふまえ、平成24年1月にS市職員を対象とした成年後見制度に関するセミナーを実施し、調査結果報告とともに今後の成年後見制度の社会化と市民後見の可能性について意見交換を行った。調査データについては統計解析ソフトを活用して分析、精査を行っている。 3)ケース・スタディ 研究者自身の成年後見活動に関し成年後見活動ソフトを活用し引き続き内容のまとめを分析を行った。
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