プログラム実施可能な児童養護施設を選定し、共感疲労の観点に基づく被虐待児及び援助者支援プログラムの個別プログラムを実施し、効果の評価とプロセスの時系列分析、及び評価を行った。その際、プログラム評価のためのプロセス評価尺度(特に研修における評価尺度)及びアウトカム評価尺度、子どもの主観的QOLも作成し、プログラム実施の方法論的なモデル構築も目指した。さらに、本研究の大きなテーマである援助者の共感疲労の程度が、養育行動にどのように影響するかということを量的な質問紙調査によって検討した。その結果、1)大きく「共感疲労低群」(A型共感疲労)、「共感疲労中間群」(B型共感疲労)、「共感疲労高群」(C型共感疲労)の3つに分かれることが検証された。また、2)援助者としての資質としての満足を除いて、共感疲労高低群で、仲間、利用児、人生3つの因子において、有意差がみられた。また、3)共感疲労が高くなるにつれて、有意にバーンアウト数値が高くなっていった。このことから、共感疲労尺度が、バーンアウトを予測しうることが示唆された。4)援助者としてのファンクショニング(援助の質)との関係性をFR行動尺度及び愛着養育行動評定尺度を用いて検証した。その結果、FR行動の4つの因子すべてにおいて共感疲労が高くなることでFR行動も高くなることが示唆された。一方で、愛着養育行動は共感疲労によって有意な差がなかった。共感疲労の調整が養育の質に左右することが示唆された。さらに、5)個別支援の必要性を検討し、共感疲労の最適化モデルの実践例として、個別支援のためのコメントフォーマットを作成した。「援助者支援・被虐待児支援プログラム」が、「子どもへの支援は、養育者への支援である」ということを実践するアプローチとして位置付けることができる可能性が考察された。以上は、藤岡(2011)において発表した(日本社会事業大学研究紀要第58集)。
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