2009年度、本調査研究においては、まず、日本における労働統合型社会的企業(WISE)の実証研究第一弾として、就労困難者の職場づくりを行っている東京・神奈川・千葉・埼玉のワーカーズ・コレクティブ12団体に対する詳細なヒアリング調査を行い、ワーカーズ・コレクティブの事業経営が、生活クラブ生協との取引関係や地域でのネットワークによって大きく支えられていることなどを理解することができた。一方、ワーカーズ・コレクティブには、公的資金を忌避する傾向もあり、そのことが事業性の拡大を阻害する一つの要因になっていることもうかがわれた。なお、今回のヒアリング調査においては、都道府県のワーカーズ・コレクティブ連合組織の代表と共にJWISE研究会という共同調査研究組織を立ち上げ、実践家と共に、調査対象の選定、ヒアリング項目や質問票の検討を丹念に行うことができた。それゆえ、現場の感覚に基づいた質問票を作成することが可能となり、今後のWISE比較調査に生かすことができる調査票を構築することができた。この点も、今回の調査の重要な副産物といえるだろう。 一方、韓国社会的企業関係者との研究交流に関しては、11月に韓国社会的経済研究会からお招きを受け、日本の社会的企業についてソウルで報告すると同時に、韓国社会的企業育成法の抱える課題や韓国社会的企業を支える中間支援組織の実態についても理解することができた。そして、継続的に日韓の社会的企業の国際比較研究を行っていくことを確認し、非常に良好な関係を築くことができた。
|