2011年度は、第一に、2010年度までの日本国内におけるWISE調査(主として労働者協同組合とワーカーズ・コレクティブ)の延長上で、労働者協同組合の組合員を対象とした意識調査の分析を行った。これは、労働者協同組合連合会が自ら行ったアンケート調査の分析を行わせて頂いたものであり、労働者協同組合における「協同労働」が、組合員にとって実質的に、どのように認識されているのか、また、組合員参加が、現実的に、どのようなレベルで行われているのかを検討した。第二に、本年度が、本調査研究の最終年度にあたるため、11月上旬には、韓国の聖公会大学、柳韓大学の研究者と共にこれまでのお互いの社会的企業研究に関して意見交換のための国際シンポジウムを、ソウルにある柳韓大学で開催した。韓国サイドからは、聖公会大学のイ・ヨンファン、キム・ソンギをはじめ、数多くの研究者や実践家が参加し、日本からは、研究代表者である藤井敦史、研究分担者の原田晃樹、その他、研究協力者の北島健一(立教大)、大高研道(聖学院大)が参加した。この国際シンポジウムでは、日韓の社会的企業が発展していく上で抱えている制度上の課題が極めて近いことが改めて明らかとなった。とりわけ社会的企業と行政との事業委託をめぐっては、日韓双方共において、行政による優先購買の弱さ、社会的企業における社会的価値を明確に評価する仕組みの欠如といった問題が存在していることが理解できた。また、韓国社会的企業育成法に関しては、認証制度ゆえに、行政の裁量が大きい問題、社会性を維持するための資本所有の制限や民主的参加が弱められている問題などが指摘された。これらの韓国社会的企業の実態から、日本で社会的企業を法制化する際に考えるべき論点を考察することが可能となった。
|