エンパワメントベースでの退院支援のミクロレベルの方法論は、開発したアセスメントおよびプランニングシートの使い方について、各地の社会福祉士やケアマネジャーの連絡会や研修会で講演し、および実施についての具体的な演習を行いその使用感について評価をうけまとめた。当事者がエンパワメントとして隊員やその後の生活を生きることの意味についてはその重要性の認識は深まった。その方法論としてのアセスメントシートの活用についても、技術としてエンパワメントを実施するのに役立ったとの評価が多かった。ただし技術として身につけるのには、何回かセッションが必要であり、普及方法について課題が残った。 また地域におけるメゾレベルのエンパワメントの仕組みづくりについては、講演および研修にて、カンファレンスや協議会でのファシリテートの技術として普及を試みた。そのための手順シートや評価指標等の研究が今後必要と考えられた。またメゾ介入に関してはモデル地域を設定し、その中心にMSWを配置しての退院支援システムの研究については、都市部と山間部2箇所で働きかけを行い実施したが、地域連携パスで実施しているものとの差別化が難しいとの意見があり、制度に則ったシステムではエンパワメントベースになりにくいことの理解が十分得られなかった。 また地域における退院支援のシステム構築の実態と課題について、5か所でヒヤリングを実施した。また地域連携パスには載らないような、感染症者や家族全体で課題が複合して生じているような支援困難事例に焦点を当て量的調査をこころみた。その結果退院支援のプロセスのうち、ケースの発見と特定、スクリーニングのプロセスで見たときの医療と福祉の乖離が顕著に表れており、保健医療領域のソーシャルハイリスク概念の再検討の必要性を導いた。
|