本研究の目的は、精神障害当事者が教育機関に出向き、精神疾患の好発時期にある中学生・高校生に自己の病いの体験を語る教育活動の有効性を図ることにある。 平成23年度は、3年間の研究の成果を報告することを主として、(1)精神障害当事者による語りが聞き手に及ぼす影響、(2)精神障害当事者の中学生・高校生に対する語りによる自己変容(3)教育機関における教職員のメンタルヘルスリテラシー、に対する調査研究を行った。 その結果、(1)精神障害当事者による語りが聞き手に及ぼす影響として、「精神障害(者)に関する知識の習得」「精神障害者の生活のしづらさに対する理解の促進」「自身のメンタルヘルスの関心の向上」「共生社会の実現に対する意識の向上」がみられた。 (2)精神障害当事者の中学生・高校生に対する語りによる自己変容として、精神障害当事者は「前向き」 「自分の内側から回復する力の育成」「生活の幅の拡大」「病いの肯定的変化」「自己効力感の向上」などの自己変容を認識していた。 (3)教育機関における教職員のメンタルヘルスリテラシーとして、精神疾患に関する識別率はあまり高くはないものの、その対処方法としてカウンセリングや精神科医の受診を選定していることから、日頃より教育機関と精神保健福祉機関との情報交換の必要性を示唆できる。 上記の研究結果に関して、学会発表(3演題)、論文発表(2本)を行った。
|