研究初年度である今年度は、これまで積み上げてきた基礎研究や開発したアフリケーションソフトを用いた研究を深化させ、ハイリスクな状態にある利用者システム(以下ハイリスク利用者システムと略)にかかわるソーシャルワーカーのチーム・アセスメントを支援するツールとしての実用化をめざし、現場のソーシャルワーカーや研究者への聞き取り調査と事例研究を中心に行った。 具体的には、 (1)ハイリスク利用者システムにかかわり対応に苦慮した経験のある精神保健福祉分野で活動するソーシャルワーカーから、事例のヒアリングを行った。当初、異なる領域で活動する少なくとも3名の社会福祉専門職(うち1名はPSW)がかかわった事例を想定していた。ヒアリングを行う過程で、3者と最初から限定せず、社会福祉専門職との連携で苦労した事例としてあげてもらうとソーシャルワーカーとしての共通基盤が問われるような多様な事例が提示されることに気がついた。 (2)一方で、児童・高齢者などの他領域からとらえた精神障害者とよばれる人たちがかかわっているハイリスク利用者システムに関する事例のヒアリングを行った。同様に、3者と限定するとなかなかソーシャルワーカーの方たちから事例はあがってこないが、連携で苦労した事例と質問を変えるとPSWと同様に多様な事例が提示された。このことから、ソーシャルワーカーの方たちが現場で最も苦慮しているところから、研究をはじめることの必要性を認識することができた。 (3)エコシステム研究会におけるチーム・アセスメント支援ツール作業部会のメンバーとの協働により、実践支援ツールとしての目的や機能を理論的・実践的に再点検し、実用化へ向けての試行版の作成に着手することができた。次年度には現場のソーシャルワーカーの協力を得て、実際の事例に基づき、そこにかかわった複数のソーシャルワーカーに入力をしてもらい検証作業を行う予定である。
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