「韓国の貧困地域におけるコミュニティ実践モデルを活用した子ども家庭支援システム研究」(H16-18年度科研費)を通して創設した「地域児童センター・オンダルセム」(児童福祉法通所施設)を研究拠点として貧困脱却・自立支援モデルの開発を研究目的としている。22年度はセンター設立から5年を経て、児童の成長過程に伴う新たな家族・生活問題が浮上し、ミクロレベルでの介入では中学生の多問題ケースの相談援助を実施した。またサービス効果の検証を行うために児童、保護者、行政、学校等への聞き取り調査を実施した。結果として、センターの諸サービスが児童・保護者のプラスの行動変容につながっていることがわかった。さらに児童がエンパワーされることにより、保護者もエンパワーされ、自立意識、貧困脱却への具体的な努力が進んでいることが確認された。児童の生活改善例としては学力向上、生徒会役員、学習・文化・スポーツ分野での受賞、コミュニケーション力、相互支援関係、衛生・栄養状態の改善等である。 メゾレベルでの介入ではスタッフ及び地域リーダーによる運営委員会の組織分析を行った。3代のセンター長の働きかけと支援者組織との関連性を補助金・寄附金・協力者の獲得状況に焦点を当てて検証した結果、リーダーシップの形態が運営促進要因であることがわかった。この点は日本社会福祉学会で報告を行った。加えて、マクロレベルでの介入の結果、本センターが市・区内の地域児童センターのモデルとして区長から認定され、まちづくりのコンペティションにも実践活動が発表され、区が受賞した。区の広報紙・英字新聞や一般新聞にもセンターの取り組みが掲載され、地域サービスネットワーク化に貢献した。現在、文化センター主催の映画製作・出演団体に選ばれ、児童が監督の指導のもと参画している等、アドボカシー、啓発活動の方法としても実践研究の意義が確認された。
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