本研究の実践研究拠点である地域児童センター(児童福祉法に基づく放課後児童通所施設)は平成16年度から18年度の科研費によって創設されたものである。平成24年3月には開設7年目を迎え、当初から利用している児童が中学生、高校生に成長し、低所得家庭及び家族機能が低下した家庭の児童を地域福祉の視点から支援を実施してきた。特に平成23年度には、ミクロレベルの介入として、ひとり親家庭の思春期児童及び家族への個別相談援助を強化した。定期的な個別面談とケース検討を行い、父子家庭、母子家庭のきょうだい間にみられる葛藤の調整、ひとり息子への過度な親の期待による抑圧状況の緩和、DV家庭の母親支援、多文化家庭への個別支援などを目的とした聞き取り調査を実施し、関係機関への代弁、サービス連携を行った。また、入所時からの観察記録により、モチベーション及び学習行動、リーダーシップなどの向上した中学生4名を選抜し、夏季日本体験プログラムを企画し、本学の学生ボランティアによる語学サポートを得て、将来の進路選択に向けてのグループ・エンパワメントを実施した。 このプログラム開発は、本研究の成果の一部を研究者が日本での地域公開型の講座・セミナー等で発表した後に、末期がん患者で闘病中の女性からの支援、地域住民のリーダーなどの人的支援により実現したものである。日韓の架け橋となる交流支援は韓国の釜山日報、影島区の地元新聞、英字新聞などに記事として掲載された。このことが貧困児童・家庭と支援者の双方をエンパワーする結果となった。一連のセンター活動の成果については、ニュースレターとしてまとめ(一部日本語掲載)、福祉・教育ほか関係機関に配布されている。さらに、本実践に対する行政評価(釜山広域市・影島区)、第三者評価(全国地域児童情報センター協議会)を受け、それらの結果を平成21年度から3箇年にわたり公表した(韓国語)。各項目にわたり点数化されており、88-89点(100点)を得て、区内のモデル施設として認知された。
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