児童虐待等の理由により親から分離され、児童福祉施設や里親宅で暮らす子どもたちが、自分自身が誰から生まれ、どういう理由で施設に入所したのかなど自身のライフストーリーを、信頼できる大人とともに辿り、自らのアイデンティティを築いていくこと、つまり、ライフストーリーワークの実践が現在必要となっている。この実践を可能とするための具体的方策について研究を行った。また、非配偶者間生殖補助医療により生まれた子どもが自らの出生の真実を秘密にされ、成人して知った時、アイデンティティ・クライシスに陥っている現実があるため、そのような人(子ども)へのライフストーリーワークの必要性を研究した。これを実施するためのツールとして、ライフストーリーブックを作成した。具体的には以下の通りである。 1.ライフストーリーワークを親から分離された子どもたちに対して実施する際の手引き書である「児童福祉施設・里親宅で暮らす子どもたちとライフストーリーワークをはじめるにあたって」を作成した。イギリスBAAF(英国養子縁組里親委託協会)より学んだ理論、実施方法をもとに、日本版にアレンジをした。 2.ライフストーリーワークの実践者へのインタビューを研究協力者と共に実施した。この結果により、実践上の課題が抽出され、ライフストーリーワークの普及のためのトレーニングの必要性について研究した。 3.非配偶者間生殖補助医療により生まれた人(子ども)へのライフストーリーワークについて研究した。この実施のためのツールである「精子・卵子の提供により生まれた人(子ども)のためのライフストーリーブック」及び、その手引書である「ライフストーリーブックの使い方」を作成した。この作成について、精子提供で生まれた当事者へのインタビュー実施により当事者の意見を重視し、ライフストーリーワークを実施する際の知識、技術、倫理、価値について盛り込んだ。
|