研究実績の概要 本研究は、ヨーロッパで近年急速に進展しつつあるソーシャルエコノミーの観点から、障害者の就労と社会参加を促進するための既存の制度・施策と補完的な役割を果たす第三の道を明らかにし、いかなる社会的かつ制度的条件が必要なのかを明らかにすることを課題とし、それらを踏まえたインプリケーションとして、熊本県水俣地域における現実的展開の可能性を明らかにする。 1)調査・研究の実施:前年度までの調査を踏まえて、調査研究報告のとりまとめに努めた。なお昨年3月11日の東北大震災および福島原発事故という緊急事態に対して、4月および6月に緊急に現地調査を実施し、被災地の訪問を行うとともに障害者就労継続支援事業実施施設のインタビューを行った。また、本年2月、従来の社会的事業所制度に加えてソーシャルファーム事業の立ち上げを検討し始めた札幌市に関する追加調査を行った。なお、水俣地域で企業組合やNPO関係者による障害者の就労支援と社会的事業所の取り組みについては、地元関係者との研究会を重ね、可能性と必要性について明らかにした。これらを通して、札幌市の制度および滋賀県の特徴を踏まえ、障害者就労に関わる新たな制度の必要性を明らかにすることができた。 2)研究報告:これまでの研究調査に関して、障害者労働研究会においてフランスのケースを報告、また11月にフランスおよび韓国でひらかれたソーシャルエコノミーに関する国際会議でそれぞれ日本の現状と可能性に関わる研究報告を行った。 3)研究報告のとりまとめ:昨年度行った口頭発表や第一次研究報告を踏まえて、現時点で調査・研究の取りまとめを行っており、学術雑誌に研究論文を発表する準備をしている。
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