本研究の目的は、日本と韓国における介護の質と人材育成策の内容を整理することを通して、ポスト介護保険時代に求められる介護の質と担い手養成の方向性を明らかにすることである。以下、平成22年度の研究実施計画に照らし研究成果を報告する。 昨年度は、社会保障全般や教育システムなどを含めた幅広い観点から、ポスト介護保険下における日韓両国の人材育成策の課題の整理を行った。 1. 介護保険施策と関係の深い医療保険制度・政策の実態把握のために、韓国内においては、医療保険制度関連の政策立案関係者・公的機関・関連団体、療養病院等へのヒヤリング調査を実施した。その結果、高齢者医療における医療費の増加、高齢者の社会的入院の実態や、介護保険下の療養施設との役割の不明瞭さなど、わが国が抱える課題との類似性が示唆された。 2. 介護保険制度運用の地域間格差の現状把握のために、韓国内ではソウルの外郭と農漁村地域に出向き、健康保険公団、介護保険事業者等への聞き取り調査を実施した。わが国と同様にサービスの地域間格差、既設施設の保険制度適応の難しさ、立地条件による利用者の集客力の差異など、農漁村部においても市場化の影響があり、職員教育の難しさも見受けられた。
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