本研究の目的は、日本と韓国における介護の質と人材育成策の内容を整理することを通して、ポスト介護保険時代に求められる介護の質と担い手養成の方向性を明らかにすることである。平成23年度は研究の最終年であるため、韓国から持ち帰った文献や資料、国内外の文献・資料を整理・分析し、韓国において再調査を行った。 国民健康保険公団職員への聞き取りにより、家族療養保護士制度の利用制限の目的は、サービス利用の多いこの制度に利用制限を加えることで給付抑制を図ることであり、その背景には、サービス提供にあたっての不正請求の問題があることが確認できた。しかし、介護保険料率は制度利用者が増えることにより着実に増加しており(09年4.78%→11年6.55%)、在宅サービスのなかで支出の多い家族療養保護士制度を抑制していくことが、介護保険給付の抑制に最も効果があると考えられる。また、聞き取りでは、今後はこの制度を廃止し、家族療養費へ切り替えていく考えも示された。 一方、療養保護士への教育制度の改定、試験制度の導入が図られたが、介護労働者の労働条件はなかなか改善されていない状況にある。そのなかでの今回の制度改定は、わが国と同様に介護の担い手不足に拍車をかける恐れが懸念される。また制度の抑制は家族介護から施設介護へと、ニーズの変質を招く危険性も高く、その結果、介護保険財政等への負担増といった影響も考えられる。さらに、入所施設が多いとは言えない状況下では、社会的入院を加速することも考えられ、社会的入院の増加は医療費の支出増加にもつながることも憂慮しなければならない。いずれにせよ今後の家族療養費への制度変更の危惧も踏まえて、注意深く動向を見ていく必要があるだろう。 両国ともに、保険財政の動向から介護人材育成策を把握することの必要性を再認識することができた。
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