【研究成果】平成22年度は、「救急医療施設における家族・遺族支援のためのソーシャルワーク実践モデル構築」における家族・遺族支援について、具体的な研究デザインおよび質問紙を完成させ、調査機関である救命救急センターの倫理委員会の諮問を受け承認を得た。倫理委員会の承認を得た上で、調査対象者である自死(自殺)遺族を調査機関の記録から抽出する作業を実施した。調査にあたっては、倫理的配慮を十分に重視し、心療内科医師の指導を受けるとともに、調査最終段階で再度倫理委員会の承認を得た。 現在質問紙の発送作業の準備段階である。 【具体的内容】救急医療施設において自死で亡くなられた家族・遺族調査については、先行研究より自死遺族特有の質問項目を加えるとともに、記録物より自死の実情を把握した。内容は、家族・遺族のニーズ、パーソナリティ、家族関係を含めたソーシャルサポート、受けている社会福祉制度やサービスを含めた支援等についてである。量的調査で不十分な点については、質的調査で補足する予定である。さらに、本研究結果は、平成20年度まで行っていた心肺停止状態で救命救急センターに搬送され、入院に至らずに亡くなられたご遺族の研究成果と含めて考察していく。そして、海外の文献等先行研究を踏まえて、日本における救急医療施設における家族・遺族支援を検討していく。 【意義・重要性】わが国は、自殺で亡くなられる方が平成10年以降年間3万人を超え、先進国の中では抜きん出た値となっている。社会的な施策として、平成18年「自殺対策基本法」が成立し、平成20年厚生労働省が招集した有識者検討会により「自殺未遂者・自殺者親族等のケアに関するガイドライン作成のための指針」が公表された。しかし、上記の取り組みは、自殺予防に重点が置かれ、遺族支援については不十分である。そのため、本研究はわが国の自死遺族支援において重要な示唆を提供できると考える。
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