研究概要 |
知的障がい者への就労支援と地域移行支援について,北欧とアメリカにおいて聞き取り調査を行った。 1.フィンランド(ヘルシンキ)調査 「障害者権利条約」の採択により,障がい者全体に対しての政策が改善してきており,サービス提供者の評価,障がい者の評価方法の開発が進められている。2010年1月に施設関係費の削減が決定し,今後5年間で重度障がい者居住地の確保が計画されなければならない状況にある。 職業訓練については,義務教育終了後,就労移行支援(約2年間程度)ののち,その約半数が職業専門学校に通い,残りの半数が福祉的就労に従事する。職業専門学校を修了することにより企業への就職の道は開けるが,雇用契約は結ばれず,生活費は障害年金により賄われることが多く,年金の受給と雇用に関しては法律の壁が存在する。 2.スウェーデン(ストックホルム)調査 現在法律の改正により,障がいの種別による区別は認められず「何らかの障がいのある人」という表現に統一されている。障がい者の雇用を専門に扱う職業安定所が全国で1か所ストックホルムにあるが,そこでは障がい者の特性を把握し,能力を引き出し,企業に実習を申し込み,面接方法を指導し,自信を持たせ意欲を引き出す等,職業訓練を含んだ支援が行われている。問題点として指摘される点は,障害年金が受給できない比較的軽い状態の人の生活保障が難しいということであった。国営企業サムハールの調査では,労働協約の存在が明らかになった。 3.アメリカ(カリフォルニア)調査 ランターマン法に基づく知的障がい者支援について,リージョナルセンターにおいて実施されている。とりわけ州発達センターの閉鎖に伴い地域移行プログラムに盛り込まれた企画の秀逸性と,就労移行に関する地域機関との協力体制の構築に関わるソーシャルワーカーの専門性については大いに参考になるものである。合理性と効率性を福祉サービス供給事業に取り入れ,専門職としてのソーシャルワーカーのアイデアを登用する等,リージョナルセンター責任者の競争原理をうまく活用した施策が地域移行を可能にしたといえる。
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