研究概要 |
知的障がい者への就労支援に関する調査(北欧とアメリカ)をまとめ,社会政策学会第121回大会において,次のように報告した。 1.アメリカ(カリフォルニア州)では,州立入居型施設(DC)の閉鎖に伴い,利用者の地域での住宅と就労の確保,施設職員の就業保障を一体的に行う施策が,地域センター(RC)の主導で実践され「ふつうの生活」を得る方法論となっている。就業支援プログラムは,小児病院のプロジェクトリサーチがRCより高い評価をうけ,成功報酬を獲得している。 2.フィンランド(ヘルシンキ)では,教育の一環として職業訓練が組み込まれ,就労支援が行われている。教育保障と生活保障が連続しており,生涯の保障となっている。 3.スウェーデン(ストックホルム)では,先の調査で,労働組合と経営者団体との間に障がい者を対象とした労働協約が締結されていることが分かった。そこで取り交わされる賃金レベルは,決して低いものではなく,約30%のコミューン税を支払い,25%の付加価値税を支払う生活にも対応できるものであり,「ふつうの生活」を保障するに足るものである。最低生活保障の内容は個別に,実質的に行われている。障がいの程度により就業可能時間は決定されるのであるが,職業安定所が医師等の判断に基づき,企業との話し合いで接点を見いだして決める。それに応じて障害年金支給額と賃金の割合が決まる。スウェーデン社会の根幹は,公正と公平を保つことであり,そのために必要となる施行規則は膨大な量に及ぶ。個々の生活保障を念頭においた徹底した個別対応は,煩雑な法制度において専門職により行われているものであり,その存在が極めて重要である。
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