研究概要 |
本研究は介護福祉士の職場定着を促進する要因をライフコース場面(「養成教育課程」「職業生活」「私的生活」)の出来事から探索し,また職場定着とその促進要因の関係性をライフコースをふまえて分析して,介護福祉士の職場定着を促す方策を提案することを目的とした。平成21年度における主目的は,平均勤続年数以上の勤務を条件として勤続年数が長いとみなすことができる介護福祉士に,自らの職務満足感を高める要因となった出来事を「養成教育課程」場面,「職業生活」場面,「私的生活」場面から探し出してもらうことであった。そのため平成21年10月から12月にかけ396人を対象にした自由記述式質問紙調査を実施した。 結果として勤続年数が長いとみなすことができる51人から629件の出来事エピソードを収集した。得られた出来事エピソードを集計すると養成教育場面では「印象に残る実習(例:はじめて実習へ行き介護福祉士の役割をしり,お年寄の方と話をしていたらよろこんでくれた)」が,職業生活場面では「印象に残る他職員との出会い(例:厳しき看護師さん,介護さんと出会うも丁寧に教えて頂く)」が,私的生活場面では「友人との関係(例:同期の友人がいたので現在の職場で頑張れた)」が多数を占める出来事エピソードであった。以上の結果より介護福祉士が職場定着するためには,1)学生のときの実習を充実させ,2)職場での人間関係を円滑にし,3)同世代の友人とのつきあいに配慮する必要があると考えられた。平成22年度は以上の出来事エピソードをもとに「(仮)職場定着促進要因チェックリスト」を作成し,これを用いた大規模調査を計画している。そして職場定着とライフコース場面の関連について量的データによる実証的研究を行う予定である。
|