研究概要 |
本研究の目的は,介護福祉士の職場定着を促進する要因をライフコース場面(「養成教育課程(学生生活)」,「職業生活」,「私的生活」)における出来事(エピソード)から探索し,かつ,職場定着とその促進要因との関係性をライフコースの流れに沿って分析して,介護福祉士の職場定着を促す方策を提案することである。 平成22年度の主目的は,平成21年度に明らかになった職場定着促進要因の概要と職場定着との関連について調査することであった。そこで本研究で定義した「介護福祉士の職場定着(勤務年数が長いかつ職務満足が高い)」を念頭におき,平成21年度に明らかになった職場定着促進要因の概要を検証する調査を実施した。調査は平成22年9-10月にA県介護福祉士会会員1087人を対象にして実施した。この調査では対象者の基本属性,職場定着促進要因,そして職務満足を測定する質問紙を用いたが,特に職場定着促進要因の質問紙は平成21年度の研究成果をもとに作成した。調査結果より,養成施設期間では「介護福祉士としての態勢(学生,私的生活)」と「友人からのソーシャル・サポート(私的生活)」にまつわるエピソードが,さらに介護福祉士として勤務し始めた以降では「介護職としての就職(職業生活)」,「資格取得(職業生活)」,「職員間の関係(職業生活)」,「職場環境(職業生活)」,「利用者およびその家族との関係(職業生活)」そして「友人との関係(私的生活)」にまつわるエピソードが介護福祉士の職場定着促進要因として妥当であると考えられた。以上のエピソードは,学生,職業,私的の3生活場面からなるライフコース上にあって互いに影響し合うことが予測される。今後も得られた調査データの分析を続けていくが,その際には職場定着促進要因の学生,職業,私的の3生活場面の関連性も配慮した分析(例えば構造方程式モデリングなど)も行う予定である。
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