本研究は、高齢者のwell-being(WB)に影響を及ぼす要因として3領域の社会関係(親族関係、非親族関係、組織参加)に焦点を当て、社会関係がWBに与える効果が、性別、年齢、学歴などの個人属性によってどのように異なるかを明らかにし、それによってWBに至る多様なパスを明らかにしようとするものである。 平成21年度は、個人属性の中で、性別による違いに焦点を当て、1)国内外の文献のレビューおよび、2)東京郊外の市で実施した高齢者調査データの分析を行った。文献レビューの結果、配偶者の存在とWBとの関連については、男性のほうが女性より強いことを示す結果が多かった。配偶者以外の社会関係(または関係の種類を区別していないサポートやネットワークの指標)とWBとの関係については、WBが生活満足度で測定されている場合は、女性における関連のほうが強いことを示す研究が多い一方、抑うつや孤独感などネガティブなWBを測定した研究では、男性における関連のほうが強いことを示す研究が複数みられた。また、2)の既存データの分析では、抑うつをWBとして分析した結果、独居男性では、別居親族や友人・近所との接触頻度が高い人、グループ活動に参加している人ほど抑うつが低い傾向が、独居女性や同居者のいる男女以上に強くみられ、男女差に加えて配偶者の有無による違いも示唆された。 以上のような結果の違いが、WBの測定方法の違いによるのか、社会関係の測定方法の違いによるのかについては、さらなる検討が必要であるが、社会関係のWBへの効果を男女別に検討し、かつ3領域の社会関係を区別して測定している研究自体が少ないため、文献レビューだけでは限界もある。今後は、モラールや生活満足度をWBとする別の調査データでの分析も行い、3領域の社会関係との関連について確認する。
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