本研究は若者自立塾およびこれに類する合宿型支援におけるプログラムの効果を検証し、これらのプログラムやありかたに対し提言を行うことを目的とするものである。平成21年度は研究フィールドであるK自立塾で調査を重ね、自立塾で行われているワークに参加し利用者が体験する作業内容を確認するとともに、スタッフと利用者に対してインタビュー調査を行った。示唆された点は以下の諸点である。 利用者の入塾による変化は、生活リズムの改善、意志や感情の適切な表現、コミュニケーションの円滑化、他者に対する信頼感、内省的な思考、社会的に許容される形でのストレス対処、体力の向上など多岐に渡る。これらの変化の背景には、K自立塾の理念・基本方針、塾の規則正しい生活と身体的労働、細かな目標設定・個別的なスタッフの関わり方、などが指摘される。一方で3ヶ月という短い期間に伴う限界も、職業レディネス形成などの点で散見され、集団生活に伴うストレス反応様の行動も認められた。 なお、平成21年度に、いわゆる「事業仕分け」により若者自立塾事業は廃止となった。本研究の研究フィールドであるKは若者自立塾事業以前より、不登校児童生徒・引きこもり者への合宿形式での支援事業を行っており、自立塾廃止以降にもその利用者がいるため、今後とも引き続き同一フィールドを調査地とし、利用者と利用経験者を対象とした調査を行ってゆく。
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