研究概要 |
本研究では,勤労者のメンタルヘルスの問題に交代性勤務のあり方から検討してきた。当初の予定通り同一事業所における3交代から2交代への制度移行に伴う変化について,生物リズムの観点から睡眠問題を中心とした分析を縦断調査の結果について行った。また,個人の健康生活の促進に向けた諸要因の関連についても明らかにするため,一般事業所や自治体,そして専門職集団である看護職などの各種の職場やその働き方について比較検討を行ってきた。 同時に,現場での支援についても展開し,調査研究結果のフィードバックの工夫や集合研修の内容検討も行ってきた。そこでは,生活行動分析を中心に行う予定であったが各事業所の多くが通常業務に影響があり,むしろ困難状況での生活安全に関してのフォローが必要になった。支援プログラムを構築するまでには十分いたらなかったが,相談や特定事例などへの支援アプローチの実践と展開ができた。 主な結果 ; 普段の職業生活におけるメンタルヘルスにはネガティブな側面だけでなく,仕事の活動水準や仕事への態度などにおけるポジティブな状態が拮抗的に関連していることを確認した。日常生活における基本的生活習慣,Karasek(1979)のコントロール感の重要性が確認された。また,休日の眠気の無さや希望を持てるということの機能が確認され,そのための支援の在り方が問われる。 労働時間と精神的健康との関連が確認されなかった。仕事量の受け止め方と同一性がそれぞれ不健康の促進,抑制要因であった。一般看護職では,寝つきの悪さやコミュニケーションの悪さがネガティブ要因だった。管理職では就床時刻のズレ・裁量権とフィット感の低さなどが精神的不健康と有意に関連していることが明らかとなった。この基本的な実態把握の上で,交代制勤務の変更による影響を確認したが,2交代移行でもかなりシフトやローテーションに問題が多く,統計的には十分な関連を明らかにできなかった。眠りについての主観的な満足感は2交代制移行者で有意に高かった。
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