本研究は、沖縄の特定地域から国内外への人々の移動と定着の過程を対象にした一連の調査研究を受けて立案されており、中年・老年期を迎えた都市移住者たちが参加する同郷コミュニティ(同郷会など、同郷人どうしの繋がり)の諸実践に着目する。その際、出身地域を軸にした重層的な共同性(親族・集落・町村・沖縄など)を活用しながら、個々の状況に適合した繋がりが編み出される動態的な過程を成員たちのライフサイクルと交叉させて考察する。また、青壮年期に実行された出郷・定着過程と比較することで、中年・老年期にある移住者たちが編成する同郷コミュニティの特質を明らかにする。 本年度は、那覇および沖縄島中部都市圏における同郷コミュニティを対象にして、以下の調査を実施した。(1)同郷会の会合および母村行事への参加状況についての参与観察。各場面での相互行為について記録を重ね、その特徴を考察した。また、会合や行事を支える人たちへのインタビューを実施した。(2)生活史調査。各集団の成員を対象に、都市への移動から定着そして現在に至るまでの過程について、ライフストーリーの聞きとりを実施した。(3)関連資料の収集と考察。節目に発刊された記念誌や会員名簿など、集団ごとに関連する資料を集め、歴史的変遷についての考察や集団間の相互比較をおこなった。 定住化の過程を経て中年・老年期に至った人たちによって構成された同郷コミュニティの諸活動には、母村への回帰志向を軸とするような時空間的展望を特徴としていることがうかがえた。今後、さらなる精査が求められる。
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