研究課題
前年度に実施した大規模な二つの調査を順次分析した。A県内における社会指標の異なる地域比較では、最終変数を向社会的行動としたモデルの検討を行った。地域住民との公的交流や集合的有能感(社会的凝集・信頼)は、地域に対する愛着を媒介して、向社会的行動に影響を及ぼしていた。もう一つの分析は、教師から測定した地域住民の活動や雰囲気に関する客観的指標が、中学生が主観的に認知する集合的有能感を媒介して、社会的情報処理に及ぼす影響について、多段共分散分析を用いて検討した。結果は、Betweenモデルでは、子ども関与度と住民連携個別性がともに集合的有能感の両下位概念を促進することが確認された。一方で、住民連携個別性は、ルール適切性を抑制し、逸脱行為悪質性を促進していた。Withinモデルでは、非公式社会的統制が一般的攻撃信念や逸脱行為悪質性軽視を抑制することが示され、社会的凝集性・信頼が社会的情報処理の全指標に望ましい影響を与えていることが確認された。次に、国際データを用いて、社会経済的地位や居住者流動性などの社会構造指標を統制した上で、集合的有能感と共同体暴力経験が、社会的情報処理や社会的逸脱行為に及ぼす影響力を検討した。階層的重回帰分析の結果、中国・韓国・米国においては、日本より説明力が高かった。社会的自己制御と逸脱行為の関連でも、日本では、自己抑制が低く自己主張が高い"主張型"のみが逸脱行為を行うのに対し、他の国では、自己抑制の主効果のみが示され、自己主張の意味合いが異なる文化であることが示唆された。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
東海心理学研究
巻: 5 ページ: 26-32
季刊社会安全
巻: 76 ページ: 27-36
実験社会心理学研究
巻: 50 ページ: 103-116