研究課題
A県内(5地域・30中学校)で実施した大規模調査のデータを用い、集合的有能感(非公式社会統制/社会的凝集性・信頼)が、社会的情報処理指標(ルールの適切性/認知的歪曲)、一般攻撃信念、逸脱行為悪質性軽視に及ぼす影響を、5つのクラス-地域ごとに比較した。その結果、集合的有能感から情報処理指標への各パスについて、地域間のパスの大きさが同じであるとする等値制約を置いたモデルの多母集団同時分析を行ったところ、十分な適合度が確保され、地域間普遍性が確認されたので、全データでパスモデルを検討した。社会的凝集性・信頼がルール適切性を高めると同時に、それ以外の反社会的な情報処理傾向を抑制していた。非公式社会的統制は、一般攻撃信念と逸脱行為悪質性軽視を抑制しているに留まった。同じデータを用いて、地域住民間の交流(私的/公的)と集合的有能感が、社会的自己制御(自己主張/自己抑制)や向社会的行動に及ぼす影響も検討した。仮説モデルを検証するため、第1段階に地域住民の交流、第2段階に集合的有能感、第3段階に社会的自己制御、第4段階に向社会的行動を配置し、構造方程式モデルを用いた分析を行った。地域住民との交流および集合的有能感は、社会的自己制御の自己主張と自己抑制の両側面を高めることによって、向社会的行動を促進することが確認された。このほか、別の地域の7つの中学校のデータを使用して、地域の集合的有能感は、生徒個人の規範意識や学校の荒れ度を媒介して、社会的逸脱行動に影響しているモデルを検証した。さらに、中学生・高校生・大学生の社会的自己制御の発達的検討も行った。
すべて 2012 2011
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犯罪心理学研究
巻: 49 ページ: 39-50