研究概要 |
1.全国調査「戦後日本の家族の歩み」(日本家族社会学会)の個票データを二次分析し,祖母仮説を検証した.共分散構造分析の結果,義母との同居が,子の繁殖成功度の上昇(第二子の出産ないし第一子と第二子の出産間隔の短縮)を通じて孫の繁殖成功度の上昇(孫の誕生ないし誕生の早期化)を促進するとのモデルにおいて,変数間の有意なパス係数とデータへの高い適合性が示された.他の親(義父ならびに実父母)との同居は,子や孫の繁殖成功度との関連が認められなかった. 2.企業の現役従業者と退職者(およびその配偶者)を対象とした大規模データを分析した.その結果,高齢世代よりも中年世代の生きがい保有率が低いこと,また,「生きる喜びや満足感」や「心の安らぎや気晴らし」を生きがいの意味とし,「趣味」や「子ども・孫・親などの家族・家庭」を生きがいの対象とする割合が高かった.さらに,「協調性」「独自性」「意欲」という性格行動特微が,生きがい保有率を高めたり,生きがいの意味や対象を多様化したりすることなどが明らかとなった. 3.中高年地域住民の大規模データを解析し,生活活動能力と主観的幸福感との関連の世代間差こついて検討した.この結果,男性では1920年代生まれの高齢コホートが若年コホートよりも主観的幸福感に対するADLの影響が大きく,女性では1930年代生まれのコホートで主観的幸福感に対するADLの影響が強いという結果が示された。 4.地域在住の中高年者を対象に,抑うつがその後4年間の知能の経時変化に与える影響について検討した.この結果,抑うつがその後の知能の変化に及ぼす影響は,知能の側面や年代により異なることが示された.すなわち,抑うつは一般的な知識量の低さと関連するが,その経時変化への影響は認められなかった.一方,情報処理の能力は,特に高齢者が抑うつ傾向にある場合,その後4年間で有意に低下していた.
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